「……曲者が踏み迷うたか。貴様、見覚えがあるな……そうか、蛮神タイタンを葬った兵だな」
同盟軍の陽動作戦のお陰で、私達は誰一人欠けることなく、前哨基地の最深部へと辿り着いた。
そこには、敵将リットアティンが待ち構えていたのだった。
「なるほど。周辺で起きている小競り合いは陽動……冒険者を送り込んで我を討ち、カストルム・オクシデンスを孤立させるつもりか。フン……エオルゼアめ、偏狭な戦術を採る」
流石に用兵に長けると言われるだけあって、即座に作戦の概要を言い当てるリットアティン。
そして、お前らでは相手にならないと、彼と共にいた百人隊長達を下がらせたのだった。
「なぜここまで、閣下がエオルゼアに執着するか解るか」
ひとり、私達と対峙するリットアティンは、そう問いかけて来た。
彼曰く、ガイウスは民を、その地を、救うために支配下に置き、導いて来たのだという。
そして、その統治の元に、全ての壁は取り払われ、才覚のある者は等しく認められ、公正であると。
「閣下は、エオルゼアの平和を望んでおられる。そこには、弱き為政者も蛮神も存在しない。皆が分け隔てなく生を謳歌できる、真の平和だ」
その言葉を聞きながら、私は、以前、ガイウスが言っていた言葉を思い出していた。
『持たざる者は、塵芥の如く消え逝くのみよ』
つまり、才覚の無い者に関しては生きる価値すらないと断罪すると公言しているのだ。
そんな彼の統治に、リットアティンの言うような理想郷があるとはとても思えなかった私は、彼の言葉に頭を振った。
「……そうか。ならば、ガイウス閣下の大望のため、我が討ち果たしてくれよう! 我が名は、リットアティン・サス・アルヴィナ! ガイウス閣下の盾にして矛なり! 貴様をここで叩く!」
そうして、敵将リットアティンとの決戦の火蓋は切って落とされたのだった。
リットアティンの戦いは、熾烈を極めた。
彼の両腕に装備している盾は、砲撃も行える、ガンシールドと呼ばれる特殊装備で、周囲を熟練の冒険者に取り囲まれていても、容易に射撃を行うことが出来るものだった。
さらに、その砲弾は着弾と同時に炎を巻き上げてその場で燃え続けるため、常に移動を強いられる事になってしまっていた。
そのせいで、何度、包囲網を崩す事になってしまったか判らない。
「……っく!!」
私は、リットアティンの無差別ともいえる攻撃を避けながら、矢を雨のごとく降らせるように射かけ続けた。
しかし、その攻撃のほとんどは、リットアティンが身に纏う分厚い鎧に阻まれ、有効打を与えられていない様だった。
「逃がさん……! 閣下によるエオルゼア統一の、礎となるがいい!」
その時、リットアティンが何かを叫んだかと思うと、ガンシールドを頭上に向けた。
そして次の瞬間、数発の砲弾を空へと向けて発射したのだった。
「……?」
一瞬、何が起きたのか理解できなかった私だけれど、直ぐに、その行動の意味を身をもって知る事になった。
「離れろ!!」
戦いの音に紛れて、誰かが叫んでいるのが聞こえた。
そしてその刹那、爆音と振動と共に、視界が爆炎で埋め尽くされたのだった。
「ぐぅっ!?」
リットアティンが放った砲弾は、その周囲一帯を吹き飛ばすような攻撃だった。
爆風に吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた私は、その衝撃で、一瞬、息が止まった。
「…ッゲホッ! ゲホッ!!」
激しく咽ながら、慌てて身を起こすと、周りのみんなも同じように地面に叩きつけられている姿が見えた。
幸い、行動不能に陥った人は居ないみたいだけれど、かなりの痛手を受けてしまったのは間違いなかった。
さっきの攻撃は連続して使えない様だったので、その後、何とか持ち直す事は出来たけれど、少しでも体力が落ちている状態で受ければ、一気に全滅もあり得る。
「みんな、散開しながら戦って!」
私はそう声をかけながら、リットアティンから距離をとった。
さっきの攻撃の威力は、正しく脅威だったけれど、判りやすい予備動作がある事と、その効果範囲はリットアティンを中心としたエリアである事は解っているので、警戒していれば、そうそう直撃は受けることはなかった。
カナさん、ラムダさんの二人のタンクがリットアティンを引きつけ、ワキさん、アプソーブさんの回復魔法がそれを支える。
アルシエルさん、ベルさん、メグさん、そして私のアタッカー達でダメージを重ねていく。
一瞬、危ないタイミングもあったりしたけれど、連携が整った私達の前に、流石のリットアティンも徐々に圧されていったのだった。
「グッ……この血が枯れても、貴様を討つ……!」
そして、遂にリットアティンが怯んだ瞬間を逃さず、アルシエルさんのリミットブレイク技、ブレイバーがリットアティンを捉えたのだった。
「ガッ!!」
大技の勢いに負けたリットアティンは、その巨体を魔導トランスポーターへと叩きつけた。
その衝撃で、魔導トランスポーターが不穏な音を立て始め、そこかしこから火花を散らし始める。
無尽蔵とも思えたリットアティンの体力も、流石に限界を迎えた様だった。
それでも、すぐに膝を付くことをせず、まだまだ戦えるとばかりに、一歩、また一歩とこちらに向かって来ようとする気迫は、まるで鬼人の様だった。
「こんな……ところで……不覚……申し訳……ございません……最後まで……覇道を……ともに……歩きとう……ございました……」
そう呟きながら、数歩踏み出したリットアティンは、そこで天を仰ぎ見た。
「ガイウス閣下ァァァァッ!!」
そして、最後にそう雄叫びを上げると、遂に、その巨体を沈めたのだった。
「……」
私は、ただ無言で、倒れたリットアティンの姿を見ていた。
力で支配しようとするものは、力で返される。
昔、どこかの誰かが言っていた言葉を、私は思い出していたのだった。
リットアティン討伐おめでとうございます。
真面目に(アイテムレベル合わせて)やろうとすると、苦戦を強いられるんですね。
最初に戦った時、パーティの皆さんが強すぎて数分で終了。
その時はむしろ申し訳なさが……。
リットアティン「ガンシールドでも防げぬ、ミサイルは無視される……アイテムレベルオーバーの奴らに囲まれる我の立場は……(グスグス」
フォムト「……おっさん、わかったから帰ってくれ」
ありがとうございます!
参加して下さった人達も、新鮮な緊張感を感じていたみたいでした(笑
毎回、下限IL制限は大変ですが、せめて、初見攻略時は、このやり方で行きたいなと思います(^▽^)/